プレゼントのお知らせ

0707231_2原作者松田洋子と監督タナダユキによる原作「赤い文化住宅の初子」サイン本を5名様にプレゼントいたします。
5冊とも微妙にサインが違いますので、下記画像をご参考に、お好きな賞品をお選びください。

[締め切り]
 07年8月6日(月)
[応募宛先]
 blog@jisin.jp
[メール内記載必須事項]
a.ご希望のサイン本の番号(①~⑤)
b.郵便番号・住所・氏名・電話番号
(当選者発表は、賞品の発送をもって代えさせていただきます)

[サイン画像]
      ①         ②         ③         ④         ⑤
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原作者/松田洋子×脚本&監督/タナダユキ対談(第十回)

0707231――そろそろ映画の宣伝という意味合いのお言葉を頂かないといけないんですが。
松田 「女性自身」向けに、ですよね。
タナダ 語るのは苦手なんですが……是非見て欲しいですね。思春期の甘酸っぱい感じを思い出したり、それと今の自分の生活をちょっと比べたりとかしながら、初子は今後どんな子になっていくんだろうか、みたいなことを想像するのもと楽しいかもしれません。あと、原作も読んでもらえるとすごく嬉しいかなと。
松田 宣伝ありがとうございます。
タナダ (笑)。あと、赤毛のアンの原作を読んでもらえると、さらに面白いかなと思います。
松田 あ、ボックスセットに全部まとめて作るといいかも。
タナダ (笑)。そうですよね!
松田 『赤毛のアン』と、『初子』のDVDとコミックス、あと亜優ちゃんの写真集(笑)。豪華特典に初子の貧乏ズック携帯ストラップ。まぁ、広島っていうとやくざっぽい極悪なドラマとか、主張の激しいドラマが多いじゃないですか。それが平凡な女子中学生が主人公で、ちょっとうつむき加減でつぶやく広島弁で綴られるストーリー…そんな感じの映画が出来たっていうのは面白いんじゃないかと。
タナダ そうですね。亜優ちゃんの声がまたかわいい。
松田 ため息混じりなセリフと凄く合う声でした。広島弁しゃべってるとやくざっぽいって言われるのにうんざりだと思ってる広島県人も多いと思うんですよ。こんな少女がしゃべると、こんなにエロいよって!のを見て頂きたい。方言ってエロくなるもんですねぇ。
タナダ そうですよね。ほんと。
松田 初子には実はお金持ちのお婆様がいた訳でもないし、優れた才能があった訳でもないし、それでもなんかこう……生きていかざるを得なくて、よく等身大のドラマってあるけど、これぞ本物の等身大だと思います。等身大ドラマの主人公って健康優良児が多くてちょっと頑張ればスクスク成長してくんだけど初子にはそれもないじゃないですか。頑張ってどうにかなる状況にないっていうか、泥沼の中で踏みとどまることに必死で。そりゃズックも汚れるよね、っていう。
タナダ 映画ってお客さんに見てもらってやっと映画になるんで。
松田 マンガも一緒ですね。描いただけじゃなくて、印刷されて読まれて完成。
タナダ そうですね。映画も劇場で見てもらって、やっと映画になるんで、劇場でみて欲しいですね。
松田 DVDとはやっぱり違う?
タナダ そう、全然違う。そのためにやっぱり作られてる物なんで。DVDも買ってくれると嬉しい(笑)
松田 両方見てもらえば監督も観客も二度美味しいですね。(笑)
――では今後のご活動というか、他の映画のほうは……。
タナダ 今準備中という感じですね。
――松田さん、どうですか?
松田 今年一番ぱっとしてたのが「初子の映画化」。他にぱっとしたことはないっていう。
タナダ この間、電車の中で「まほおつかいミミッチ」(松田洋子作)を読んでたんですね。あれって、表紙がちょっとこう、女の子っぽい感じじゃないですか。で、座って読んでたら、ランドセルを背負った小学生一年生か二年生くらいの女の子がぱっと入ってきたんですよ。がコロコロ、あ、てんとう虫コミックスかな、あんなのを読んでいるから、その子がしゃがんで、この人何読んでるんだろう、って。で、見たら「あれぇ?」みたいになって(笑)ひょっとしたら私が読んだことある奴かな、みたいな感じで覗き込んでたんですよ。それが「あれぇ? ミミッチ? 知らないなぁ……」みたいな感じになって、すごい面白くって(笑)ミミッチの力って凄いって思って。二重に面白かったですよ。
松田 あの表紙で、小さいお友達もだまして買わせて、大きいお友達もだまそうっていう目論みだったんですよ。ミミッチも魔女ッ娘なのに貧乏で世知辛い母子家庭ってお話で。私の漫画ってそんなのばっかりです。
――じゃあ最後に何か二人から映画に関してどうしてもこれだけは言っておきたいこととかありましたら、是非どうぞ。
松田 『赤毛のアン』が好きな方と嫌いな方にお勧めします。
タナダ 劇場で観て下さいってしか言えないです。シネコンとかじゃなくって、いい感じの映画館で。
――初子は平成なのに、すごい昭和の匂いがするというか。
松田 貧乏なせいでしょう。金持ちだとライフスタイルが最新のものに更新されてくけど、貧乏人には無理。バブル前で歴史が止まったまんま。
タナダ 劇場で観てください!

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原作者/松田洋子×脚本&監督/タナダユキ対談(第九回)

070702松田 親切にされても嬉しくないっていうか、ちょっとした嫌感っていうか、同級生に 同情されて卵焼きもらうシーンががあったじゃないですか。
タナダ こういうことされたら、たまんないだろうなぁって思って。大きなお世話だよっていう。
松田 おせっかいが達人の域でおばちゃんかよってレベル。「うちのお母さん、料理は下手だけど、卵焼きだけは美味しいのよ、いかが?」って(笑)よく出来た子だけに、ホントイラっときたっていう。
タナダ 決して悪い子じゃないんだけど、善意の時の方がかえって嫌な気分になる時ってあるじゃないですか。玉子焼きをくれた、あの子自身も全然嫌な子ではなくって、すっごくいい子なんだけど、それがかえって、相手を追い詰める状況になるってことは、人の善意って怖いことってあるなっていうか。
松田 ああいういい子の家にはピアノとかあって、クリスマスとかに家族で歌ってんだろうな。お母さんの手作りリースと手作りケーキもありそう。
タナダ 実際にあの卵焼きが、亜優ちゃんの嫌いな味だったらしくって。甘い玉子焼きが苦手らしくって、たまたま、あの卵焼きが甘い卵焼きだったらしくって。すごくいい感じで美味しくなさそうに(笑)
松田 うえ~って顔してましたよね。
タナダ カットかかった後、もっと嫌そうな顔してましたよ。「甘いのダメなんですよ~」って。
松田 へぇええ。そうなんだ。そういえば、好きなもの何?って聞いたら、「焼肉っ!」って。
タナダ (笑)
松田 そういうことを聞かれたら、もっとアイドル的にお菓子っぽいものを答えるのかと思ってたら、「焼肉っ!」
タナダ ちょっとあの子、面白いですよ。オーディションという雑誌の時のインタビューだったかな、腹が立った時どうするんですか、みたいな質問で、「鉛筆を折る」っていう。
松田 (爆笑)
タナダ でもそこには計算があって、「もう使わない鉛筆を折るんです」って言ってて、この子好きだなぁって思いましたけどね(笑)
松田 なんか親近感を覚えますね。
タナダ なんかこじんまり思っているところが。やっぱりこの子でよかったなぁって思いました。
松田 彼女、もう東京に住んでるんですか?
タナダ 今はもう上京して、寮に住んでるみたいですよ。
――ずいぶん出てますよね、今。
タナダ 出てますね。これからもっとどんどん出てくるんでしょうね。
松田 がんがん売れて欲しいですよね。

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原作者/松田洋子×脚本&監督/タナダユキ対談(第八回)

――これを見ると、なんかおおっとなったり。女性自身の読者って女性ですので、初子のような時期もきっとあっただろうし。あそこのシーン好きですよ。三島君とけんかになった時、部屋に彼が訪ねてくると服着替えるじゃないですか。すごいバタつくじゃないですか。
松田 けんかしてたってヨレヨレの部屋着姿を彼に見せるわけにいかないって急いでワンピに着替えるんですよね。あの焦ってジタバタ足踏みするのは監督がやれって言ったんですか?
タナダ 言いました(笑)
――あのどたつき感が凄いいい感じでしたね。
タナダ けっこうあわててるんで(笑)
松田 早くしなさいよ! ジタバタジタバタばっかりしててかえって時間かかってるよ! ……って言いたくなりましたね。あれ、かわいかったですね、すごい。ダメな子だこりゃぁって。決して利口じゃないですよね。大体、パターンとして不幸な子って要領がいいはずじゃないですか。
タナダ 唯一の一張羅がアレしかないっていうのも、あの子いいなぁって思って。
松田 でも靴、汚いっていう。
タナダ そうそう。そこが大事なところで。
松田 さすが元貧乏な人だけあってよくわかってますね。
タナダ そうそうそう。靴にまで回らないんですよ、貧乏だと。服はなんとか見繕えても、靴はねぇ、なかなか……。
松田 オシャレは足元からといいますけどねぇ。
タナダ 出来ないんですよねぇ。
松田 足元から崩れていくという。すごく分かります。
タナダ だから靴も汚れてないとリアルじゃないと。初子は靴、絶対あんまり持ってないはず、と思って。
松田 学校で使ってる靴って、もういくら一生懸命洗っても、白くならない。こすってる内に、「穴あいてきたぁ!」っていう。
――話していると初子ってとても魅力的な女の子に思えてくるんですよ。僕は、下駄箱でちょっと妄想して「そりゃダメだ」ってやめるところがあるじゃないですか。ああいうところがかわいいなって思いました。
松田 ちょっとむかつく恋敵の下駄箱にカエル入れてやろうかなってシーンですね。でもびっくりして彼に抱きついたりしたら私がキューピッドになっちゃうからやめとこっていう。
0706251タナダ (笑)。やっぱり、初子は、女だなって思って。初子は靴箱にカエルを入れることが道徳的に悪いからやめるんじゃなくって、あのライバルというか、山口さんっていう女の子が、好きな男の子に抱きつくかもしれないのが嫌だから止めとこうみたいな(笑) カエル自体を入れるのは別に悪いとも思ってない(笑) と思って。
松田 それ、正しいです。だから、いい子でもないし、アタマがいい訳でもない
タナダ でもそこをこう……。年をとってくると、女の子のちょっとしたダメな意地悪さっていうのが、カワイイなって思えるようになってきて。
松田 うんうん。すっごいかわいい。
タナダ それであそこはちょっとやっておきたいかなって。ちょうどいい、カエルがたまたま見つかって。
松田 あのカエルは 別に動物プロダクションを通して連れてきたわけじゃなくって?
タナダ 学校の撮影の時に、別のシーン撮っている時に、排水溝の下に手ごろな大きさのを見つけて。
松田 へぇえええ。すばらしい。
タナダ ま、その日は、そのカエルのシーンの撮影じゃなかったんで……。
松田 え? 元々脚本はあったんですか?
タナダ 元々あったんです。
松田 これ見つけたから入れよう! じゃなくって?
タナダ じゃなくて。カエルは元々あって。それで何日間か、制作部の人が飼ってて。撮影のときとか、霧吹きでシュッシュッとしてあげたり。すごく大事にしてあげて。
松田 その後どうしたんですか?
タナダ その後、戻してあげたかったんですけど、元居た場所まで行けなかったので近所の土手に。
松田 三崎までは行けないから近場で放したんですか。
タナダ 多摩川の。で、草むらの向こうには川があるわけじゃないですか。ちょっと歩けばというか、飛べば。なのに川に行かないで、何か箱に戻ろうとするんですよ(笑) どうしたんだ? って(笑)。まぁ、こおろぎとか勝手に入れてくれるし、住み安かったのかなって。
松田 ああ、あたしも箱から出ないタイプ。もっと繁殖しようよ。っていうか、頑張ろうよ。
タナダ 一応テロップには入れました。三崎初男って。
松田 (爆笑)
タナダ 見つけたのが廃校になっている三崎高校だったから、苗字はやっぱり三崎かなって。一番最後に載ってますよ、出演者の一番最後に。入れてくれってお願いして。漢字はどうしますかって言われたから、三崎高校の三崎に、初子は初めての子だから、じゃカエルは初めての男で初男にしようよ。
0706252松田 カエル好きなんですよ。だから初男さんに出演して頂けて嬉しいです。
タナダ (笑)。そうなんですか。
松田 ほら。今日してる指輪もシルバーのカエルだし。
タナダ あ! ほんとだ! ホントに好きなんですね。あー、すごい。良かったです、でも。知らずにカエルのシーン撮ったんで。
松田 なんか全然別に、あたしが頼んでないのに、ムーンライダーズの鈴木さんとか……。
タナダ ホントに知らなくって。
松田 いいように宇宙回ってるなって感じで。
タナダ (笑)
松田 そんな嬉しい偶然ってホントあるもんですよね。面白いなあって。
タナダ 小っちゃいかわいいカエルよりも、やっぱりあれくらいの
松田 ドスのきいた大きなヒキガエルじゃないと…。
タナダ でも声、かわいかったですよ。一瞬、たぶん劇場では聞こえないんですけど、音が取れてて。すっごいかわいくて、びっくり。それに飛ばないんですよ、あいつ。歩くんですよ。
松田 肥満? 扱いやすくて助かるでしょうけど。
タナダ エサが豊富だったんですかね。でもすごく、いいカエルでした。
松田 女子中学生が自らカエルを捕まえてイタズラに使おうって考えるのが面白かったですよ。気持ち悪いって普通は見るのも嫌がるでしょ。
タナダ 亜優ちゃん(初子役)が絶対に嫌なのかなって思ったんですけどね。まずこう……「亜優ちゃん、どうしても持ちたいっていうんだったら、持ってもいいよ」とか言ってたら、亜優ちゃんも、ちょっと嫌な顔をしつつも、「え~……どうしてもって言うなら持ちますけど」って(笑)。こう様子を見ているとまんざらでもないあな、この子って思って。で、ちょっと持ってって言って。それでなんかやってましたね。
松田 偉いですね、嫌がらずなんて。
タナダ 嫌がらず。ホントは嫌だったのかもしれないんですけど……。
松田 喜んでても嫌ですけどねぇ。男子小学生みたいで。
タナダ まあね(笑) でもちゃんとやって。

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原作者/松田洋子×脚本&監督/タナダユキ対談(第七回)

――色々と印象的なシーンが多いんですけど、映画の後にマンガを読ませていただいて、すごく同じ空気というか。
松田 そうですね。
タナダ 凄く嬉しいです。そこは凄く大事にしたかったので。
松田 こちらも大事にして頂けて嬉しいです。微妙な色気も再現されてて。
タナダ そうそうそうそう!だからその……、何人か、女性の人なんですけど、初子に色気があったって言ってくださって、それは嬉しくて……。
――色気ありましたよね。三島君が初子を部屋で襲うじゃないですか。分かるなっていう。スキがあるっていうか。ちょっと天然のゆるさっていうか。
松田 天然のゆるさって、ちょっとずるいですね。
タナダ だから同性から見るとね、なんて女だってたまに思ったりするかもしれないんですけど。でも異性からは認められてますよね。
松田 ああ、男はああいうタイプの罠にはまりやすい、はまりたいって。
タナダ (笑)
松田 お互い罠をかけあう関係になるんでしょうけど。
タナダ (笑)
松田 たぶん、三島君みたいな学級委員タイプは初子にみたいな子が心地いいんですよ。ああ、わしが頑張ったのう、あの子を救ったのはわしじゃけんって思ってる。そういうことで自分がいい気持ちになって。
タナダ そうですね。
松田 あと、訳ありの女を好きな男っていますよね。
タナダ ああ(笑)
――僕はわりとね、初子みたいなタイプにもてるんですよ。
0706181松田&タナダ (爆笑)
――でも、僕は三島君のあのズックがすごく良くて、優等生の制服なのにあのズックでずっと走ってきて、正面から撮った時にあのズックだけ走ってきて、なんかあの世代の男の子が持っている清廉さというか。切なかったな、と思って。
タナダ だから、見ているところが凄い繊細だなって。
松田 ねぇ!いいなぁ、思春期の心を持ったおじさん。
――何も予備知識もなく、プレス資料を先に読まないで来ようと思って。いったい何が起こっていくんだろうと思ったら、いろいろと起こっていくじゃないですか。でも見終わった後に、何が起こった訳でもないような気がするのが、凄く不思議で。
タナダ 起こっていることは、実はすごいことなんですけどね。火事だったり。それでも日常は続いていくじゃないですか。ウチ、実は家が一回焼けてて。
松田 えっ?!
タナダ 店が一回全焼して、高2の時に家が半焼して(笑)
松田 マジですか?辛い過去を思い出させてしまいましたか?
タナダ そういえば、ウチも一回、燃えたなぁって(笑)
松田 あぁ……。なんかすいません、あたしなんて思いつきで書いてて…
タナダ いえいえ(笑)
――初子が受け入れていくじゃないですか、受け入れる受け入れないの選択肢がないままに。それがすごくナチュラルボーンの強さっていうか。そこが凄いなって。
タナダ そうですね。
――今後、初子はきっとはたから見て不幸な目にあい続けて、でもそれをちゃんと受け入れて生きていくんだなって思いました。
松田 悪徳販売とかに引っかかりそうですよね。そんなつもりじゃないのに。
タナダ (笑)。判、押しとらんのに……みたいな(笑)もちろん可哀想かもしれないし、不幸かもしれないけど、渦中にいる人間って、自分を可哀想がっている余裕が無いじゃないですか。ただ必死に生きていく、で、来た物事に対しても選択肢を考える余裕もないっていうのがリアルだなって。
0706182松田 かっこよくピンチを乗り越えられるってこともほとんどないですしね。
タナダ そうなんですよ。そんなかっこいいことって、人生でほとんど無いですよね。
松田 でもかっこよく乗り越えるドラマの登場人物に「私みたい!」って自己投影しがちなんですよ。
タナダ (笑)
――でも、それなんじゃないんですかねぇ。だって、日本の映画って劇的過ぎて……おかしいですよ。そういう劇的な作品ばかりを見ていると、現実でも、映画のようにここで何とかなるかなとか、ちょっと甘いことを思っちゃいそうです。
松田 自分に関しては劇的で御都合主義であって欲しいんですよね(笑)

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原作者/松田洋子×脚本&監督/タナダユキ対談(第六回)

――わりと初子って救いがあるじゃないですか。それって、お二人、松田さんはマンガで、タナダさんは映画を撮られて、初子を通して自分の中にある救いというか……何かこう通じるるものがあったんですか?
タナダ まぁ、ラストシーンの後、三島君は初子に会いにはに行かないだろう……
松田 うん。たぶん。
070612タナダ やっぱりきつい状況じゃないですか。家燃えちゃって、お父さん死んじゃってっていう状況は。だけれども、あの時に三島君が居てくれたっていうそのことだけが、例えば初子が三十を超えて、私と同じくらいの年齢になった時に、……なんかその頃初子が何をやってるのかっていうのはちょっと想像できないんですけど、ふと思い出した時に、三島君の名前を覚えているかどうかは別として……。
松田 名前くらいは覚えてるだろう。
タナダ (笑)あの時に三島君っていう男の子が、別に何をしてくれる訳ではなかったんだけど、居てくれてよかったなっていうことが、大人になってもっと辛い目にあった時に、ちょっとだけ救いになるんじゃないかなっていう。
松田 ほんのかすかな救いだと思うですけど、あるとなしでは大違い。
タナダ 大違いですね!
松田 大人になればもっと濃厚な恋愛もするでしょうけど、そういう相手の男の名前の方が忘れてしまいがちだと思う。
タナダ そうですね、それでプレイバックじゃないですか、ずーっと。三島君のことは。すごい幻想ですけど。
松田 少女のプラトニックな頃の濃厚な妄想の方が絶対覚えてる。
タナダ うんうんうん。
松田 で、老人ホームに入ってから、思い出してニヤっと笑うという……。
タナダ (笑)
―― 一番最後の「わしら家族んなってホームドラマにするんじゃ」って、キスするかしないかでぱーっとエンドロールが流れるっていうのが、なんていうか自分には凄く分かりやすかったというか……。今の日本映画だと、たぶんあそこで長回しっていう……。
松田 カメラが二人の周りをグルグル360度回って撮影ってよくありますね。
タナダ (笑)
――それが無かったんで、嬉しかったです。
松田 やはり純愛は寸止めじゃないと。
タナダ そうですね。どこで切ろうかと、編集の時にすごく迷って、寸前で。

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原作者/松田洋子×脚本&監督/タナダユキ対談(第五回)

――自分の中学時代は、物質的にはあんなにしょっぱいものではなかったんですけど、よく考えたら、ああいうような気持ちでずっと中学時代を過ごしてた気がするな、と思って……。
松田 タナダさんにもしょっぱいとこってありました?
タナダ しょっぱかったですね。けっこうリアルに貧乏だったんで。
松田 え! そうだったんですか?
タナダ うふふふ。
松田 貧乏人だったんですか?!
タナダ 貧乏人なんです(笑) あの、ウチ、水洗じゃなかったんです、トイレ。
松田 そんなのうちの田舎じゃ普通ですよ。
タナダ ウチのほうは北九州で、工業地帯で、一応、都会だからだから、さすがにクラスに1人とかなんですよ。高校になると、わりと遠くから来るから、3人くらいに増えたんですけど(笑)
松田 (笑)
タナダ 凄い悲しかったのが、小学校の頃、クラスの男の子が今から言うこと想像してみてって言うんです。「何?」って聞くと「透明のバキュームカー」と。一応、うちにバキュームカーが来ることは内緒にしてるから、笑っておかないとっていう辛さがちょっとありましたね(笑) これは九州時代の話で、この後、東京です。
――初子たち二人って、お父さんが死んでしまいますけど、初子の家族が中心に進んでいくじゃないですか?やっぱり、お二人とも家族に対して何か思ってらっしゃるのかなと思ったんですけど。
松田 貧乏以外に、何か家族のエピソードってありました?
タナダ う~んと~……
松田 普通?
タナダ いや、父親がバリバリ働いている姿を、あまり見てないような……(笑)。
松田 おおおお! 基本基本!うちも父親が働かずに家でよく寝てたんで「うちのお父ちゃん、身体弱いんだ。」って勘違いしてました。
タナダ よく高校出してくれたな、と思いますよ。
0706042松田 ウチのお父さんは社長しか出来ない人で。
タナダ あああ……
松田  超零細企業の社長をずーっとやってて。
タナダ 誰かの下で、とかは出来ないという……。
松田 絶っっ対に出来ない。
タナダ ウチの父親もわりとそんなもんです。
松田 で、つぶす訳ですよ。で、無職になると急に体が弱くなって寝てるみたいになっちゃう。
タナダ (笑)
松田 で、また新しく作って、つぶして、また体が弱くなっての繰り返し。そりゃ貧乏ですね。
タナダ (笑)
松田 ただつぶすと負債とか付くし、普通の貧乏じゃないんですよ。育ててくれたし、高校も出してくれたんで感謝はしてます。
――貧乏っていうか、貧しいって感じじゃないですか、初子って。では、いったい貧しいってなんだろうって思ったんですね。貧しいと豊かであるのなら、じゃあ貧しいってどういうことを言うのかなとか、日ごろ考えないことをちょっと……
松田 お坊ちゃんっぽい質問ですね(笑) 私は貧乏を主義主張でやってたんじゃないんで、そんな観念っぽくは語れないです。
タナダ (笑)
――何なんだろうな、貧しいって、と。
0706041タナダ うまく答えられないんですけど、自分がリアルに貧しかったんで、客観的に見れないっていうのはある感じですね。
松田 貧乏だと、何もかも終わっていくじゃないですか。壊れていくっていう……。それで何かもう、未来が見えないっていうのがありますよね。どうなるか分からないっていうのが、一番怖いじゃないですか。お金だって貯金していって、計画を立てていって、これくらいの時にこういうことが出来るよね、っていうのが一切無い訳ですよ。貧乏すぎて本当に一家離散っていう……。そういうのが貧乏。全然観念じゃない。リアルに怖いっていう。
タナダ そう、怖い、恐怖ですよね、初子のセリフでもあるけど。本当に恐怖ですよ。
松田 だって米代がないんだもん。
タナダ そうそうそう。
松田 米、食べられないんだもん。お腹が減るっていうのって恐怖じゃないですか。……給食費払えないし。
タナダ 今は払えるのに払わないっていう……。
松田 払えよ~!
タナダ ねぇ!
松田 当時、給食費を払えなかったら、「とんでもないことをしでかしております!」って。
タナダ そうですよね! ちょっと遅れるだけで、もうなんか心がキューってなって、すごく小っちゃくなっちゃう、くらいな感じですよね。
松田 辛かったけど別に親を恨む気も無かったでしたね。払ってよ~って言ったって親もお金ないし仕方ない。
タナダ ね、先生、ごめんなさいって感じでしたよね。
松田 そんな貧しさ。

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原作者/松田洋子×脚本&監督/タナダユキ対談(第四回)

――最近、とみに小さい子というか、中学生とかが自殺したりとか……。お二人がそういうメッセージをこめている感じはしないんですけど、でもアレを読むと初子よりはマシかなっていうか。
0705281_1松田&タナダ (笑)。
松田 下っていったら、いっくらでも初子なんかより下はいますよね。実はあたし、初子のことってそんなに不幸って思わないんですよね。
タナダ 私もそうなんですよ! あの子は全然かわいそうじゃないんですよね。三島君がいる時点でかなり……。
松田 せいぜい薄幸っていうくらいで。
タナダ そうそう。決してかわいそうっていう訳ではなくって……。もしかわいそうな子っていうことがあるのだとしたら、発想がやっぱり「赤毛のアン」的に前向きにできないとか、そういうのは「かわいそう」という意味に取れるかもしれないんですけど、
松田 でもバイト先のラーメン屋のおやじに時給を削られてしまうのは……
タナダ あれだけはかわいそうですよね。
松田 あれだけ、実話なんですよ。
タナダ あ、そうなんですか?
松田 初子ってちょっと自伝的なマンガなんですかって勘違いされるんですけど、当たり前ですけど全然自伝なんかじゃなくって、あたしのホントの体験したことってあそこだけなんですよ。
タナダ ひどい話ですよね!
松田 高校生の時のことだったんですけどね。時給500円出すって言われてたのに、お給料もらったら時給450円なんですよ。ありえないですよね!
タナダ うわぁぁぁ……。それは広島の……。
松田 そう、広島の。すぐに潰れましたね。 タナダ ひどい話ですね。そこの店長を……ムーンライダーズの鈴木さんがやるっていうのは……大ファンですよね。
松田 ええ、当時は辛いバイトから帰るとずっとムーンライダーズ聞いてましたよ。その鈴木さんに店長役をやってもらったんで時給の損失分がやっと補填された気がします。
0705282_1タナダ (笑)
松田 あたしが出演依頼をしたわけじゃないんですけど、なんだかやり遂げたなぁって。
タナダ (笑)。でも、なんか本人はすごく面白がってくれてましたよ。
松田 何かこう……タバコふかしながら、貧乏ゆすりを……。
タナダ あれ、何にも言ってないんですよ、貧乏ゆすりしてくださいとか……。たぶん自分がタイミングを取りやすかったんだと思うんですけど。あと、カンペを何かシレッと隠してましたけど(笑)
松田 あぁあ……そうなんですかぁ(笑) シナリオ覚えず演じるるタイプ(笑)
タナダ 脚本は読んできてくれてるとは思うんですけど(笑)
松田 そんな思い出のシーンもあったりして。
タナダ 誰に良いって言ってもらえるのが嬉しいかって、やっぱり原作者の方にホッとしてもらえるのが……。
松田 いやいや、別に原作者なんて……ねぇ。
タナダ それが一番安心できるというか。
松田 監督なんて、映画になったら自分のものだから原作なんて関係ないわよ、みたいな感じかと思ってました。
タナダ いや、全然。あの……原作をメチャクチャにしてやろうっていう企画じゃないんで、そもそもが(笑) 面白いところをちゃんと踏まえた上で、じゃあ映画で何が出来るだろうかっていう発想だったんで。やっぱりこう何ていうか……土足で踏みにじるようなことだけはしたくないっていうのが凄くあって。
松田 小道具とかも凄い良かったんですけど、あのズックとかああいうのを選んだのはまた別に?
タナダ えーと、一応何種類か用意されて、その中から全部選ばないといけなくて……。
松田 タナダさんが選んだんですか?
タナダ はい。
松田 へぇぇ。小道具から全部。
タナダ ただ、アレ、紐靴の設定だったんですけど、用意してくれていたのは、ゴムっていう。
0705283松田 それは貧乏すぎ(笑)
タナダ ゴムだったんです。ひもの部分が。それで、私が見た目だけでぱっと選んじゃってて、もうすごい時間の無い中で選んだんで、私が悪いんですけど。十円を攻防するシーンがあって、ト書きでは「紐靴を結ぶ振りをして10円を拾う」だったんですけど、ゴムだと……
松田 紐ないよ!
タナダ 結べないよって思って(笑)、そのシーンの撮影当日にゴムだときづいたんです。で、ちょうどたまたま、撮影でお借りしていた本屋さんのお婆ちゃんが「ウチの孫を出して欲しい」と言っていたと聞いて。お婆ちゃんはなんていうか、客としてウロウロして、ちらっと画面に孫が映れば嬉しいな、ぐらいな感じだったらしいんですけど、せっかく紐がないし、その子と戦わせるか、みたいな(笑)
松田 ああ、そういう……。
タナダ あの日突然出来たシーンなんです。
松田 へえぇ、あれ本屋の子なんだ。
タナダ 本屋の子なんです。
松田 いい演技してますよね。
タナダ ええ、割といい顔だったんで。
松田 ずっとすましてましたもんね。
タナダ あと、初子って、お兄ちゃんなんかには弱いけど、下の子たちにはちょっと強気で行く部分があるとちょっと面白いなって思って。
松田 あの初子のガンの飛ばし方凄い良かったですよ。
タナダ (笑) それでああいうシーンが偶然生まれたっていう。
松田 初子って物凄くいい子みたいに間違われやすいけど……。
タナダ そうなんですよ!
松田 いい子っていう訳でもなくって。薄幸なだけで。
タナダ そうなんですよね(笑)。悪い子ではないんだけど、ちゃんとした人間的な面白さって絶対持ってるっていう。
松田 「死ね」とか言ったり。やさぐれた子ですよね。
タナダ そうですね。かといって、ヤンキーになる訳ではないっていう。そこが凄くリアルで。単純じゃないじゃないですか。貧乏だから、お兄ちゃんはヤンキーぽくても、ヤンキーではなくて働こうとしている。ちゃんとまともに生活にしたくでも出来ない人たちのリアルなことが描かれているっていう……。
松田 ヤンキーって社交的じゃないと出来ないじゃないですか。
タナダ そうですねぇ。物凄い体育会系というか、集団行動を強要されますよね。お兄ちゃん、それすらも出来ないという(笑)
松田 漫画でもブサイクに書いてないし、映画も塩谷瞬さんがやってるんでカッコイイし。
タナダ そうそうそう! 原作でも、ブサイクじゃないのに、女とまともに対峙できないお兄ちゃんの悲しさというか。
松田 ちょっと頑張れば、すごいモテモテになるのに。
タナダ 若いし、カッコイイし。それが出来なくて風俗に走るって、切ないですよね。あまりの話ですけど、っていう(笑)

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原作者/松田洋子×脚本&監督/タナダユキ対談(第三回)

――では、完成された映画を見て、どのような感想をもたれましたか?
松田 嬉しくて大喜びしましたね。原作に気を遣って作って頂いてるし、いい映画になってたし。映画化されたのを見て怒る原作者は多いみたいですけど。
タナダ 多いんですよね(しみじみ)。
松田 俺に嫌がらせするために作ったのか!って怒鳴ってる人もいたな。
タナダ うわぁあ、怖い怖いぃ……。
松田 最初に映画化するって言われた時、面倒になるだけだろうから自分から口出しするのはやめとこう、もしダメな出来でも「映画化されただけでありがたいじゃない、いい思い出できたじゃない! 老後に」って思ってたんです。
タナダ 老後に(笑)
0705212_1松田 でもその後タナダさんにお会いしたら「この人なら大丈夫」って思えてちょっと安心しましたよ。あと(別な)インタビューでも言ったんですけど、「映画作ってやるから出資しろ」って言われるんじゃないかってその方が不安で。
タナダ あっはっはっは、そんなにびくびくしてたんですか?
松田 もうほんとに。
タナダ いくら出させられるんだろうって(笑)
松田 とりあえず一千万くらいかなって。どこから借りればいいんだろうって。
タナダ それ、悪徳商法じゃないですか(笑)
松田 失礼な妄想でしたね。そんな悪徳プロデューサー扱いしてすいませんでした。
 あの……自分の作品を語るのって間抜けすぎて苦手なんですけど、映画っていうのも語るのって難しくないですか?
タナダ 難しいですね。慣れられないですね、なかなか。出来上がった物が全てだし、前に高田渡さんのドキュメンタリーをやった時に、渡さんが、誰に何と言われようと、一回出したものはウンコ、しょんべんと一緒なんだから、みたいな話をされてて(笑)。
松田 そうなんですよ。
タナダ そうなんです、もうどうしようもなくって。しかも相当恥ずかしいもの、どんなに人が褒めてくれても、自分でああしたかった、こう出来たかもって反省って絶対にあるじゃないですか、どんな作品でも。だから語るのが苦手で、やっぱりどこかに恥ずかしさもあって、それでもインタビューには答えなければいけないっていう辛さっていうのがあります……。だから堂々と語れる監督とか凄いなって。
松田 凄いですよね。
タナダ ここ見てくださいとか、ここがいいんですとか。ちょっと……言えないですね。
松田 あたしなんか気が弱いから、自分のマンガが褒められたら、しまいには怒り出しますからね。
タナダ (笑)
松田 我ながら意味わかんない。褒められてるんだから、もっと素直になれよ、そこんとこはって思うんですけどねぇ。
タナダ 思春期の中学生みたい(笑)
松田 ほんと難しいですよ。
0705211_1タナダ 難しいですよね。ありがとうございますとは思うんですけど、「どうよ?」みたいな感じには絶対になれないですね。どこかでそういう部分ってないといけないんですけど、悪いものは作ってないっていう気分って必要なんですけど……。何か……すいませんって感じになりますよね。とりあえずあやまっておこう、みたいな(笑)
松田 映画はタナダさんが作ってるし、役者さんがそれぞれ演じてるし、ちょっと離れて見られたお陰で、「初子、いいよね!」って初めて思えました。
タナダ (笑)。嬉しいですよね、そう言ってもらえると。
松田 ホント良かったですよ。役者さんが皆はまり役っていうか。当て書きした訳じゃないのに、当て書きしたみたいになって。
タナダ 原作のほうが先に出来ているんですけどね……。あとビックリしたのが、時代が追いついちゃってるっていうか。原作が出来たのって2000年くらいでしたっけ?
 二、三年……ちょっと前じゃないですか、連載されてたのって。その頃ってまだワーキングプアって言葉もない頃で、でも作品を読むと……。
松田 やな時代を先取りしてた……
タナダ それって凄いなって。

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原作者/松田洋子×脚本&監督/タナダユキ対談(第二回)

――主演の東亜優は初子役に、はまっていたんじゃないですか?
0705141_1タナダ ええ、はまっていたと思います。
松田 もうムードが全然(他の子と違ってて)。
――不思議な感じとか、ぼーっと立ってる背中とかの雰囲気とかこう……いやらしいっていうと変ですけど(笑)
松田 (笑)原作はわりとぽっちゃり目に書いたんですけど、東さんって華奢な子だけども、ここ(両頬を押さえて)がぽっちゃりしてるというか。
タナダ そう、画面に映ると初子っぽいんですよ。実際に見ると、本当に可愛くて、正直現場に耐えられるかなって思ったくらい。
松田 あっつい撮影でしたしね。真夏にね。
タナダ そうなんですよね(笑) 真夏に真冬を撮って。
0705143松田 彼氏の三島君役の佐野和真さんは猛暑の中ネクタイ締めて、坂道を何度も走らされてましたからね。彼女(タナダ監督を指して)、ホントに人非人って思いましたよ。
タナダ ええ(笑) ホントはもう何本か走らせたかったんですけど(笑)。原作自体がとても映画向きなんじゃないかな、と。きっちりつめられているし。
松田 四話しかないしね。最初から四話って話で書いたから。
タナダ 原作は中篇なんですよね。長さ的にはそんなに長くないんですけど……。
松田  全部で100ページも無いですね。
タナダ 映画を見てから原作を読んだ人に、「原作って短いんですね。大変じゃなかったですか?」って聞かれるんですけど、でもぎっしりつまってるから、全然大変じゃなくって、それより、映画として何が出来るだろうっていうことの方が難しかったですね。
松田 ちゃんとタナダさんのオリジナルエピソードも加えられてたし。
タナダ 私も頑張って無理矢理……そのままやってもなんか……
松田 なんか腹立つし?(笑)
タナダ いや、腹は立たないですけど(笑) 何かできないかな、せっかく映画なんだしって。マンガとして成立している物を、わざわざ映画にする訳じゃないですか?ここで一本、何か考えないとダメだろうな、って。そこを見つけるのが難しかったですね。完成されてるから、原作が。
松田 お兄ちゃんのエピソードを増やしてくれてたんでより分かりやすくなったと思うんですよ。なんであんなに苛立ってるかとか、どうして初子にキツい言い方してしまうかとか。
タナダ お兄ちゃんは、原作を初めて読んだとき、一番感情移入したかなぁ。初子よりも、どっちかっていうと最初はお兄ちゃんだったっていうか。
松田   ああ。可哀想ですもんね、あの人(笑)
0705142_1タナダ あの人、だって……。初子は本当にちっちゃい時にもうお父さんが居なくなってるから、顔も忘れちゃってるじゃないですか。そのことを初子は悲しがってるかもしれないけど、お兄ちゃんって完全に記憶に残ってる年齢じゃないですか。覚えてることの方が辛いじゃないですか。
松田 絶対そうですよね。
タナダ それで男で、一応長男で(笑)、自分も父親みたいな、ああいう人になってしまうんじゃないかっていう恐怖感ってお兄ちゃんの方が強烈にあるんじゃないかなって。
松田 あんなオヤジみたいになりたくない、なりたくないって思っているのに、なっていくっていう。
タナダ なっていくっていう(笑)
松田 酒乱の父親を憎んでたくせに息子も酒乱に…なんて話、よく聞きますよね。
タナダ こんなおやじにだけにはなりたくない、って思いながら、…こう行っちゃうって感じがすごく(笑)。だから、お兄ちゃんが靴下を脱ぐシーンって、映画でも絶対にやりたくって。唯一、お兄ちゃんが解放される瞬間って、アレなんじゃないかって。
松田 あっはっはっはっは。足の裏の皮膚が、自由になって皮膚呼吸が出来るっていう。
タナダ そうそうそう(笑)
松田 でもあのシーンを気にする人って結構多くって、「男の人って靴下脱ぐわよね」って。
タナダ あ、でも私、女ですけど脱ぎますけどね、靴下。夏とかは(笑)
松田 そうね、解放ね。靴下脱ぐシーンにに反応してた人は「私の前では彼も安心して解放されてるの」って言いたかったのかもしれませんね。
タナダ (笑)

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